「…なんで一歩下がるんだよ。そんなに俺が嫌かよ」



不機嫌さを隠そうともせず福田が言った。

「えっあの…そういうわけではなくて…。」

少し焦りながら言葉を返す彼女。
二人の間に微妙な空気が流れる。


はぁっと福田がため息をついた。


「蒼樹嬢、髪の毛にトーンが付いてるぜ」
「えっ」
「気付いてないだろうから取ってやろうとしたんだよ。べつにあんたを取って食おうなんて思っちゃいないさ」

言いながら、なんとなく気分が落ち込んでいく自分に気が付いた。
そりゃあそうだろう。
好きな女に(他意はないにせよ)近づいたとたん一歩引かれたんだからな。

「まぁ、俺なんかに触られるのは嫌だろうけど」

皮肉を言うのも精一杯。

「そんなことないです」

ん?

「私、べつに福田さんが嫌だったわけじゃないです」

「えっ?」

見れば彼女の頬はほんのり赤くなっている。

「福田さんがあまりに近くに来るから、その……」

赤くなり、妙に歯切れの悪い彼女に心音が速くなる。

「心臓の音が聞こえてしまったらと思って…」

言われた瞬間自分の心音がひときわ大きくドクンと脈打ったのが自分でもわかった。
おい、あんたそれどういう意味かわかってんのか?なんで赤くなってるんだよ。勘違いしちまうぜ?
赤くなってばつが悪そうにすみません、と小さく言う彼女に愛しさがこみ上げた。






怖くないならこっちへおいで



(こないのならばいっそ、こちらから)



END




私が書くと何故か福田氏はヘタレですorz