バーバラ→イザで暗めごちゃごちゃ系の予定。
バーバラのイメージを崩されたくない方は閲覧しないことを強くお勧めします。

































イザとは話が合う。
笑いのツボが似ているし軽口を言っても気楽に流してくれたり敢えてノッてふざけあったり。
先が見えない、果てがないようにも見えるこの旅でそういうのって実はすごく大切なんじゃないかと思う。


あたしとイザは未だに自分たちの実体に出会えていない。必ず会えるなんて保障はどこにもない。不安は常に付きまとう。だけど笑いあってふざけあって、そんなときだけでもその苦しみを忘れることが出来ることがあたしは嬉しかった。


悩みなんて取り去ってくれるカラリとした笑顔が好き。まっすぐな瞳に見つめられると泣きそうになる。
自分がイザにどうしようもなく惹かれているは自覚していた。


そして、その思いが報われる確率がゼロに等しいことだって…。







































ムドーを倒し、さらなる魔王を倒すべく旅を続けているあたし達。
長い移動の末、日も落ちかける時刻になり今日はここで野宿をしようということになった。

仕事を分担して各自野宿のための準備をしているなか、あたしは腕を組んでボーっとイザを眺めていた。いや、正確には彼の表情を。
彼の側にはいつも当たり前のようにミレーユがいる。否、彼が当たり前のようにミレーユの側に行くのだ。
その理由は彼のその表情を見れば十人が十人とも確信するだろう。


彼は、恋をしていた。

傍らの美しい女性に。


イザが彼女を見る表情はどこまでも柔らかく温かい。愛しくて愛しくて仕方がないのだろうことが端から見ても明らかである。只、その眼差しを受ける本人は全く気がついていないようだけれど。


バーバラはチクチクと痛む胸を無視してその表情を凝視していた。



「ったく……イザは気持ちがすぐに顔や行動に出る。あの癖がいつか戦闘で命取りにならなきゃいいんだが」


突然頭の上の方から声が降ってきた。見上げると隣には縦も横も自分の2倍はある人物。


「ハッサン」

「あんな、明らかに惚れてますって顔しててるんだもんな」

「でもミレーユ、気付いてないよね」

「ああ、全くだ。イザは単純すぎるが姐さんは鈍すぎる」


イザ、ご愁傷様、とハッサンが目を閉じ手を合わせて言った。
アハハ、と渇いた笑いが自分の口から出た。


「でも本当、イザはミレーユのこと気に掛けすぎだと思う」


視線をイザに戻して言った。
胸の痛みが先刻よりも大きくなっている気がする。


「ああ、そうだな」


苦笑混じりでハッサンが答えた。


「イザ、戦闘中もミレーユの安否を気にしながら戦ってるもん。目が、ミレーユを探してる。あれ、今後絶対危なくなる」


冷めた声色で放った言葉にハッサンがこちらを見下ろしたのがなんとなくわかった。
しかし、なにも言わないハッサンにあたしは言葉を吐き出すのを止めることが出来なかった。


「だいたい、ミレーユはそんないつも守ってもらわなきゃいけないような弱い女じゃないでしょ。自分の身くらい自分で守れるわよ」


どこまでも感情の伴っていない自分の声色に自分が自分でないような錯覚に陥る。


ああ、あたし ミレーユのこと、好きじゃない。


思ってから、ハッとして1つため息をついた。
嘘。
好きじゃないなんて。
ミレーユのことは好き。だけど………嫌だな、って思うことがあるのも事実。


初めてその感情に気が付いたのはイザへの恋情を自覚してすぐだった。いつも見ていたから、イザがその瞳に誰を写しているかなんてすぐにわかった。その瞳が時に切なく歪むのだって何度も見てきた。

ああ、その瞳にあたしを写してくれたなら。あたしならイザにそんな眼をさせないのに。

叶わぬ想いは行き場を失い常に胸にくすぶった。ミレーユがいなければ。いや、せめてミレーユより先にイザに会っていれば、或いは…。バーバラの顔が苦痛に歪んだ。胸の痛みは容赦なく剥き出しの心を抉る。本当はこんな自分が一番好きじゃない。自分の浅ましい考えに息をするのも苦しくなる。


と、唐突に頭にポンっと大きな手がおかれた。そうして、大きな、温かなハッサンの掌がポンっポンっと撫でるように、なだめるようにあたしの頭を2度はねた。


「しんどいな」


ハッサンは前を向いたままポツリと呟いた。


「………〜っ」


優しく温かいその手に、あたしはこみ上げてくるものを必死に押しとどめる。




泣かない。絶対泣くもんか。















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