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「お前、いつも歩きで通ってんのか?」 部活後、2人きりになった部室で葉柱が聞いてきた。 着替えながら顔も上げない。失礼な奴だ。せめて顔見て話せよ。 けどまぁ不満は我慢して答えてやった。 「ああ、あたしはバイク持ってねぇしな。別に必要だとも思わねえ」 通学に不便を感じたことはない。 家から徒歩でも十分な距離に学校はある。 喧嘩だけじゃ身体もなまるし歩くのはちょうどいい。 「送ってってやるよ。帰り」 何を言われたのか一瞬わからなかった。 耳をすませば 聞こえる君の鼓動 世界中で私だけが聴いている音 【ZARD/息もできない】 「・・・あ?送るってアンタバイクじゃん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 葉柱が、不機嫌そうに見てくる。 あ、なんだ? ・・・・・・・・・・・・・・・・・うん? とりあえず思い浮かんだことを口にしてみる。 「もしかしてバイク、乗せてくれんの?」 不機嫌な顔のまま葉柱が頷いた。 とりあえず思い浮かんだ考えは葉柱の意図を正確に理解できていたようだ。 少し、驚いた。 「アンタがあたしをバイクに乗せるなんてどういう風の吹き回しだい?」 「別に。なんとなく。ただの気まぐれだ。」 ふーん。 葉柱の言い方から本当にただの気まぐれなんだろうな、と思った。 何かを含んだ言い方ではなかったから。 ま、いいか。 マネージャーの仕事は意外と疲れるし大変だ。たまには楽に家に帰らせてもらおう。 何より、葉柱があたしをバイクに乗せるなんて2度とないかもしれない。 「じゃあよろしく。大事に送り届けてくれよな」 「カッ。大事にねえ・・・」 何かぶつぶつ言いながら葉柱が先に部室を出る。 次いであたしも部室を出た。 葉柱について行った先には奴の自慢のゼファーが止められていた。 改造しまくった銀色の輝くゼファー。 言ったことはないが一応カッコいいと思う。 これに乗って長ランをはためかせて走る葉柱も。 本人には言わない。 言えない。 知らなくていい。 先にゼファーに跨りエンジンをかけながら葉柱が乗れよ、とばかりに自分の後ろを見やる。 座席の後ろのほうに跨り、目の前に座る気まぐれの胴に腕を回した。 意外とがっしりした身体。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 柄にもなくドキドキし始めた自分の心臓は気のせいだと思い込もう。 ・・・にしてもこのままただ家に送ってもらうだけってのは惜しい気がする。 日は、まだ暮れていない。 「おい、葉柱。」 エンジン音に負けないように大きな声でじゃべる。 「ああ?何だよ」 奴も同じくらい大きな声で返す。 「家に送ってくれる前にどっか連れてけよ」 「あ?」 「だから、どっか連れてけよ。真っ直ぐ帰ったって暇なんだよ」 聞いて、葉柱は何か考え込んでいるようだった。 断られることは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なさそうだ。 少し嬉しくなった。 「・・・・どっかってどこだよ。場所言えよ」 しばらくして返事が返ってきた。 さてはこいつ、どっこも思いつかなかったな。 かと言ってあたしも特に行きたい場所なんてなかったから。 ただ、少しでも長く葉柱の後ろに座ってたかったから。 「どこでもいい。葉柱が行きたいところ」 そう答えていた。 「カッ。そういうの一番困るんだよな。どこでもいい、じゃなくてどうでもいい、なんじゃねーの」 言いながらゼファーは動き出した。 どうでもいいわけないだろ。 言おうと思ったけど、やめた。 かわりに胴に回す腕に力をこめてやった。 葉柱の、ぐえっという声が聞こえた。 あんたの行きたい所へ、連れてってよ。 |